人物画・母の歌
Portraits & Essays
![]() 母の顔 1986 27×38cm
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棺桶の蓋を外して母を描き疲れたるとき並びて眠る
度の合わぬ眼鏡を掛けし母なれば柩の中に持たせて閉じし
息止みし己が顔を描かせて母はその子を絵描きとなしぬ
母の骨みるを拒めば弟と父らで拾い壺におさめ来
アイバンクの登録言いし母の目の角膜二つ焼いてしまいぬ
一番下の位をと言い遺す母の戒名みじかく慎まし
手鏡と三角巾と柩打ちなしたる石を我は集める
吾が母の口の黒子は左かと夜中に起きてデスマスク見る
我がうちに生き行く母の好みなる切干大根食べてみるなり
この世に母がいないことを思い出さないように眠り込んでしまおう
髪を梳く母を思いて髪を梳く母の髪残る母の櫛にて
眠り方忘れた夜に咳をする咳の仕方も母を真似てる
我の血の香りに寄りし蚊の一つ潰せし後に母かと気付く
最後まで痩せ我慢する母が生みし我なり仕方なく痩せ我慢する
夢中に何処に居るかと亡き母から電話がかかる
忘れいし母の声なり出来ますと言うに目覚めて闇に目を開く
袋詰めなす母のホチキスの音かと目覚めれば雨垂れの音
二つある湯呑みにお茶を注ぎたる一つ飲み干し一つ残れり
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